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Vol.4 診断の難しさ

私は診断とは消去法だと考えています。

あるひとつの症状があるとします。その症状から考えられる病気がいくつか自分の中で浮かんできます。
そしてその浮かんだいくつかの病気を各種検査により絞り込んでいきます。

検査にはその結果が出ればこの病気という様な疾病特有の検査も存在しますが、そうでない検査も多々あります。
つまり検査によって、「この病気ではないな」と調べていくのです。

下痢の症例を例に挙げて説明します。  下痢の症状で来院されると、まず欠かすことなく行われる検査に検便があります。
その便の中に下痢を起こさせる寄生虫、例えば回虫が検出されたとします。
その下痢は回虫症と診断され、それに対する薬が処方されます。しかしそれで一件落着と考える獣医師は当院にはいません。

では獣医師は何を考えているのでしょうか?
それは「発見できなかった他の種類の寄生虫が存在しないか?」、「寄生虫以外の疾患が存在していないか?」ということです。

今回行った検便で分かったことは回虫が寄生しているということだけです。
他の寄生虫は発見されなかったというだけで、あくまでも存在しない証明がなされたわけではないのです。
つまり今回の治療で回虫症が消去され、もし下痢が治らなかった場合は回虫症以外の可能性を考えていく必要があるわけです。

獣医師は勉強すればするほど、この下痢という症状に対して浮かんでくる病気が増えていきます。
そして回虫症という診断に迷いが出てきますので、回虫症と「仮診断」しての治療と考えるようになっていくのです。

もしかすると、うちの病院はパシッと診断名を言ってくれない優柔不断なイメージで受け取られているかもしれません・・・。
でも、本当に難しいんですよ? 自信を持って一つだけに絞り込むというのは・・・。